税務申告していても「決算変更届」は別物です
建設業許可を持っている事業者は、毎事業年度が終わるたびに、工事実績や財務諸表などをまとめた書類を行政庁へ提出する義務があります。これが一般に「決算変更届(決算届・決算報告)」と呼ばれる手続きです。(建設業法第11条第2項/e-Gov)
ところが実務では、「税理士に決算・申告はお願いしているから大丈夫」「更新のときにまとめて出せばいい」と思い、未提出のままになっているケースが少なくありません。
結論から言うと、決算変更届の未提出は“すぐ罰則”というより、更新・業種追加などの申請が止まる/行政対応が増える/取引信用に響くなど、後から大きなコストになりやすい分野です。この記事では、よくあるリスクと今からできる現実的な対策を整理します。
(建設業許可の更新を忘れたらどうなる?今からできる対処法)
(建設業許可の新規取得の流れ|申請前に確認すべきポイント)
まず基本:決算変更届とは?いつまでに出す?
決算変更届は、許可業者が毎事業年度終了時点の「工事経歴書」「直前3年の工事施工金額」など、国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後4か月以内に提出しなければならない制度です。(建設業法第11条第2項/e-Gov)
国土交通省の「許可申請に必要となる書類の一覧」でも、「事業年度経過後4月以内に届出」と明記されています。(国土交通省PDF)
東京都の案内でも同様に「毎事業年度終了後4か月以内に決算報告の届出が必要」と整理されています。(東京都都市整備局PDF)
提出書類は許可区分(大臣/知事)や法人・個人で細部が変わりますが、一般に次のようなものがセットになります。(国土交通省PDF)
- 変更届出書(表紙)
- 工事経歴書、直前3年の工事施工金額
- 財務諸表(法人:貸借対照表・損益計算書等/個人:対応様式)
※自治体によって様式や追加書類(納税証明等)の扱いが異なるため、必ず管轄の手引きを確認してください。
決算変更届を出していないとどうなる?よくあるリスク3つ
1)更新・業種追加など「許可手続きが進まない」
実務上いちばん困るのがこれです。東京都は、期日到来の決算報告が提出されていない場合、更新申請・新規申請・業種追加申請等ができない旨を注意喚起しています。(東京都都市整備局PDF)
「更新が近いから慌てて出す」→「未提出分があるので先に決算届を」→「期限に間に合わない」という詰み方が典型です。
2)行政指導・追加説明(理由書や再発防止策等)を求められる可能性
関東地方整備局の資料では、変更届等を期限内に提出しない場合、提出できない理由や再発防止策について書面等で報告を求める場合がある、また必要な届出がされないと許可申請手続きを行えない場合がある、と示されています。(関東地方整備局PDF)
つまり「遅れても受理されることはある」が、「何もなくスルーされるとは限らない」ということです。
3)罰則の規定がある(ただし実務は段階的)
未提出には罰則規定があります。東京都の案内でも、未提出の場合は罰則規定(建設業法第50条)があると明記しています。(東京都都市整備局PDF)
関東地方整備局の資料では、提出しない場合、建設業法第50条による罰則(6月以下の懲役又は100万円以下の罰金)があると説明されています。(関東地方整備局PDF)
もちろん、遅れたら即罰則という運用より、まずは是正指導・提出の促しが中心になりやすいですが、「法律上は義務で、違反の位置づけになる」点は押さえておく必要があります。(建設業法第50条の関係条文/e-Gov)
よくある勘違い(ここで事故ります)
勘違い①「税務署に申告しているから、行政への届出は不要」
税務申告は税法の世界、決算変更届は建設業法に基づく手続きで、提出義務の根拠が別です。(建設業法第11条第2項/e-Gov)
勘違い②「赤字・売上ゼロなら出さなくていい」
工事実績が少ない/ゼロでも、届出義務自体が消えるわけではありません。毎事業年度ごとの届出として整理されています。(国土交通省PDF)
勘違い③「更新のときにまとめて出せばOK」
未提出があると更新等が受け付けられない運用が示されているため、結果的に“まとめて出すつもりが更新に間に合わない”ことが起きます。(東京都都市整備局PDF)
【今からできる】未提出がある場合の対処法(現実的な手順)
ステップ1:まず「何期分未提出か」を確定する
- 直近の提出控え(受付印)を探す
- 見つからない場合は、管轄窓口に会社名/許可番号で提出状況を照会
ここを曖昧にすると、準備も見積もりもできません。
ステップ2:未提出分を「さかのぼって提出」する(多くの自治体で可能)
期限は過ぎていますが、未提出分をまとめて提出し、適法状態へ戻すのが基本戦略です。遅延時に理由書や再発防止策の報告を求める場合があることも示されているため、(関東地方整備局PDF)「遅れた理由」+「今後の管理方法」までセットで整えておくとスムーズです。
ステップ3:更新が近い場合は「更新の前提を満たす順番」で動く
未提出があると更新が止まる可能性がある以上、(東京都都市整備局PDF)
- ①未提出の決算変更届を先に整える
- ②同時に更新書類の準備を進める
の“並走”が現実的です。更新の考え方は、こちらで整理しています。
(建設業許可の更新を忘れたらどうなる?今からできる対処法)
ステップ4:次の5年のために「提出体制」を作る(最重要)
決算変更届は、更新直前にまとめてやると毎回詰まりやすいので、運用を仕組みにします。
- 決算(申告)完了→「4か月以内」をカレンダー固定(建設業法第11条第2項/e-Gov)
- 税理士と行政手続の役割分担を明確化(税務=税理士、建設業書類=行政書士等)
- 許可番号ごとに「決算届提出年/更新満了日」を一覧で管理
チェックリスト:今すぐセルフ診断
□ 直近1期分の決算変更届を、事業年度終了後4か月以内に出している(建設業法第11条第2項/e-Gov)
□ 過去数年分の提出控え(受付印)を保管している
□ 変更届(役員・所在地等)と決算届の“未提出ゼロ”を把握している
□ 更新満了日から逆算して、半年前には準備に着手している
1つでも不安なら、未提出分の棚卸しから始めるのが安全です。
まとめ:決算変更届は「放置しても平気」ではなく「後で必ず効いてくる」
決算変更届の未提出は、更新・業種追加などの許可手続きが止まる、行政から説明を求められる、罰則規定がある、といった形で“後から効いてくる”典型的なトラブルです。(東京都都市整備局PDF)(関東地方整備局PDF)
逆に言えば、今の時点で未提出年数を確定し、さかのぼって提出し、以後は「毎年のルーティン」に落とせば、リスクは十分コントロールできます。(建設業法第11条第2項/e-Gov)
未提出年数の確認と、更新に間に合う順番を整理します
「何期分出していないか分からない」「更新が近いが間に合うか不安」という場合、提出状況の棚卸し→最短の提出順→更新スケジュールまで一緒に整理できます。まずは許可番号と決算期だけ手元に用意してご相談ください。

